かざみどり巻頭文

ホームセンターの本流

 最近は、新聞を開くと金融不安、テレビをつければ自動車の減産や失業のニュースばかりである。確かに厳しい世の中ではあるが、不況をあおりたてるようなニュースもいかがなものか。ますます消費者の財布の紐が締められていく。

 わが社が株式上場を果たしたのが今から21年前。昭和62年のことである。その時のことを思い出す。「暗黒の月曜日」といわれた10月19日のニューヨーク株式の大暴落が世界を巻き込んだ、大波乱のなかの株式公開であった。わが社の幹部は、この時期に遭遇したことに大きな不安を抱いていた。関係筋も心配をして相談に来られた。公募の払い込みが既に終わって、28日の上場を待つだけになっていた。私は幹部に、「この時期が運がいいのか悪いのかは、今、決まることではない。何年か経って振り返ってみたときに分かることで、右往左往しても始まらない。急変するときの流れは、スピードの出ている乗り物に乗っているようなもので、窓から近くに流れる現象をとらえても判断はできない。むしろ、遠い山や太陽を見るような気持ちで臨む方がよい。株式市場も過熱気味の相場が冷やされた本当の中身のあるところからの出発が、コメリの上場の時期であれば、むしろいいのではないか」と話した。
  以前、本成寺の管長様からお聞きした話を思い出しながら社員を説いた。

  現在の金融恐慌を見ていると、その当時のことが思い出される。
  最近の経済誌に、日本の有力企業の経営者が、「恐怖が経済を悪くする。明るく考え、元気を出せ」と訴えておられた。資源問題で物価が高騰し、相場が不況を助長して消費低迷が続き、半年もたたないうちに今度は相場が暴落してしまった。工場は閉鎖され、失業者が出てますます消費は落ち込んでいる。考えてみると、人は時としてニュースに惑わされて基本を忘れ、物事にとらわれすぎる。企業は、昨日も今日もそして明日も、やるべき基本的なことは何も変わっていない。毎日の地道な積み重ねのなかにしか企業は生かされない。
  日本のホームセンターは海外からは雑貨スーパーといわれている。本物のホームセンターをつくっていかなければならない。資材、建材、農業用品についても、いまだ古い流通のままで、近代化された流通体制にはなっていない。コメリの店数も946店舗となり、他の業界からも大きく嘱望されている。プロ農家を育成支援するためのNPO法人日本プロ農業総合支援機構や日本郵政グループからの協力依頼があった。コメリの店舗ネットワークは決して物販だけではなく、社会のインフラになっていかなければならないのである。

  2009年重点方針
  ホームセンターの本流をめざし  流通機構の改革をなそう