かざみどり巻頭文

被災地の花壇 再生

 このたび、岩手県の陸前高田市立気仙中学校よりお礼状が届いた。そこには、あの大震災から四カ月が過ぎ、瓦礫が少しずつ片付けられるなかで一日も早く普通の生活に戻れるよう頑張っていることや、震災で校舎が全壊し、以前の学校から十キロ以上離れた廃校に校舎を移し通学している生徒の姿、そして七月四日にコメリの東北地区本部の八名が気仙中学校の生徒と共に校舎前の花壇やプランターに花を植え、目にも鮮やかな花壇が出来上がったことへのお礼が丁寧に書かれてあった。
 気仙中学校は、コメリのHC陸前高田店からわずか一キロの至近距離にあり、これまでにも何度か緑資金のボランティア活動で交流があった。緑化活動が盛んで、市内の花壇コンクールでは例年上位に入賞するなど花のあふれる美しい学校だったそうだ。
 ところが、三月十一日に発生した地震と津波で校舎は倒壊し、壊滅的な被害を受けた。生徒は全員避難して無事だったそうだが、授業を再開した学校は花壇も空っぽ。中学校の職員さんより「子どもたちの心を目から楽しませたい」とコメリ緑資金の会に花植えの依頼があり、東北地区本部に伝えたところ、ぜひお手伝いさせてくださいとすぐに応じてくれたという。
 コメリも陸前高田店が土台ごと津波に持っていかれ跡形もなくなった。震災後に訪ねた時、街の様子は一変していて、七万本の松があった高田松原には一本の松しか残っておらず、お客様から非常に支持されていた陸前高田店は、看板も店の資材も遠いところに流されていた。店があったと思われる場所に立ち、亡くなった店長と従業員のご冥福をお祈りした。店長は、お客様を避難させ店舗の重要書類や顧客データを持ち出した後、従業員の避難を確認して最後に店を出たという。仕事熱心で責任感が強かったそうだ。その後、大きな津波に車ごと飲まれてしまった。残念でならない。
 花植えをした気仙中学校も、店長の人柄やこれまでの店舗との交流を慕って緑化活動を申し入れてこられたのであろう。そして、参加してくれた八名は、将来を担う子どもたちが復興に向けて一歩一歩進んでくれるようにと願って活動してくれたと聞く。 コメリが出店させていただき、地域で営業をさせていただくなかで、このような心の通い合った交流がなされていることを知りうれしく思うのである。
 マリーゴールドや日々草、サルビアなど七百五十本の苗を植え、校舎前の六つの花壇とプランターはオレンジや黄色の花々で 美しく彩られた。参加した生徒も、「花を見ると明るい気持ちになる」、「すごくきれい。気分が変わる」などと喜んでくれたそうだ。
 この大震災は、店舗の流出、損壊、福島第一原発の影響による営業見合わせなど、被害の大きさも、範囲の広さと店舗数の多さも今までに経験したことのないレベルの災害であった。震災直後から全社一丸となって、それぞれが自分の役割を果たそうと取り組んでくれたことに感謝している。