
昨年10月、コメリアメリカセミナーの一行に合流し、ラスベガスのホームセンターを視察した。
アメリカを訪れるのは、9・11の同時多発テロ事件に遭遇した2001年以来である。
日本に本物のホームセンター産業をつくり上げていくためにも、アメリカのホームセンターを研究し、あるべき形を確認しておきたかった。
飛行機がラスベガスの国際空港に近づくと、砂漠の中に忽然と町が現れた。
眼下に見える町は全体が整然としており、計画的に町づくりがなされていると感じた。
ラスベガス市の人口は約61万人。観光とカジノを主な産業とする新しい町である。
空港からホテルへと向かう。以前訪れた時よりも、規律が定まり良くなっているように思えた。
そして人々が豊かな感じがする。
アメリカの豊かさとは、物の豊かさだろうか。服装を見ても、十分に提供されているという印象を受ける。
やはり、流通業は人々の豊かさに貢献できる産業なのだ。
アメリカのホームセンターは、住宅バブルの崩壊とともにビジネスモデルの大きな変更を強いられている。
そのようななかで、ホームデポ、ロウズがどう進化しているのか、視察を楽しみにしていた。
翌日、ノースラスベガスに向かった。
ホームデポは経費削減を成し遂げ、売上高は前年比3.5%増の704億ドル、純利益は前年比16.3%増の38.8億ドルとなって、既存店の売上が増加している。
現在は顧客サービスを強化して、売場に従業員が多く、接客にあたっていた。
一方ロウズは、売上高は前年比2.9%増の502億ドル、純利益が前年比8.5%減の18.4億ドルで、ホームデポと比べると既存店売上高の回復度は低いものの、
収益改善とデジタル戦略に力を入れ、ネットと店舗ビジネスの融合により新たな価値を提案している。
ロウズの店内で、「何かお手伝いしましょうか」と女性スタッフに声を掛けられた。
ロウズでの仕事について質問すると、ロウズの歴史から語り始め、その素晴らしさを丁寧に説明してくれた。
社歴17年というパート社員が、これほどまでに自分の会社を理解し、誇りを持って働いていることに驚かされた。
しかし、ここにロウズの強さがあるのだ。
両チェーンとも景気の影響はまぬがれないが、在庫量の適正化など生産性の改善を進めて利益を出せる体制づくりができていた。
それに、パソコンや携帯端末から買い物をしたいお客様の要望にも応えており、これまでの店舗でのセルフサービスを主体としたホームセンターから、新たな価値を提案する小売業として脱皮しようとする姿を感じることができた。
コメリがホームセンターに参入して35年。その間、日本の住環境は豊かになったのだろうか。
改めて、あるべきホームセンターを追い求めたいと思うのである。