かざみどり巻頭文

アメリカ視察

 
 雪の舞った昨日の冷え込みから一転、春 らしい晴天に恵まれた。毎月の一日参りで本成寺に参拝する。墓前に灯を上げ、手を合わせた。
 今日は入社式である。学生生活を終え、職に就く若い人たちのことを考えながら、新しい出発の日にどんな言葉を掛けてやったらいいのだろうかと思いを巡らす。
 出社して、入社式の会場に入ると、整然と並べられた机を前に緊張と不安の入り混じった面持ちの新入社員が迎えてくれた。
 今後の新規出店、事業の展開を担う人材としてグループ全体で三百十七名を採用させていただいた。
「入社おめでとう。多くの企業のなかからコメリを選んでくれてありがとう」
とあいさつをする。私はいつも、自分の店 が世の中の人にどれだけ役に立っているの か、コメリがなくてはならないと言ってく ださるお客様がどれだけいらっしゃるの か。それだけが企業が存在を許される証な のではないかと思っている。
 もともとは農家で、商いは金儲けのために働く嫌な職業だと思っていたが、倉本長治先生の巻頭文を読んで価値観が一転し た。一生懸命に働いて得たお金を持って来店されるお客様のために、まごころをもって良い品をより安くお売りする商いは聖職であると悟り、これをきっかけに家の仕事 に精を出すようになった。私は、事業を大きくすることは考えていない。自分の人生をかけて、自分の理想を実現したいと思ってこれまでやってきたと話す。
 新しく入社してくる人たちとは初めての出会いであるが、不思議な縁に思える。
 自分の過去を振り返ってみると、倉本長治先生との出会いにより商いに身を入れるようになり、ホームセンター事業への決意は、川ア進一先生や会田玲二先生との出会いからである。 そしてチェーンストアのビジネスは、渥美俊一先生にご指導をいただき、挑戦してきた。もし、このような出会いがなかったら、今はない。運の良さとは人との巡り合いだと思うのである。
 コメリ綱領に「己を大切にすることは、他を大切にすることだ。人も物も金も、天が与えた不思議な出会いである」とある。 人は大切にしたものによって必ず大切にされ、おかげを受けるものである。商いをする人は、まずお客様を大事にしなければならないと思う。 そして商品を大事にし、友人を大事にしてほしいと話した。
 新聞が、企業の景況感の改善を報じている。景気回復への期待が高まっているなか、やがて来る競争時代に思いを馳せる。 ホームセンター業界も大きな流れがくるだろう。その時に、時代の波に乗って発展していかなければならない。
 コメリは、売上高三千億円を超え、次の目標は五千億円である。しかしそれは、今までの延長線上にあるのではない。
 創業の精神を大切に、若い人たちには日本のモデルとなるような、真のホームセンターをつくってほしいと思うのである。