店のある風景

みちのくの花巻まつり

岩手県・花巻市

みちのくの花巻まつり

飲料水を口に一休み。口元を直してもらっているお嬢さん。神妙な顔つきでほほえましい。

岩手県花巻市

悪霊を払う鹿踊

 青森から東北自動車道を南下する。9月の半ばを迎えると田も色づき、実りの時期を告げる。
  今日は花巻まつりが楽しみだ。
  町に入ると、あちこち祭り衣装の人たちが賑やか。通りにはしめ縄が張られ、赤白の幕が戸口を飾っている。
  祭りの賑やかな笛、太鼓の音。拍子木。京都の祇園囃子の流れを汲むといわれ、深い情感と優雅な気品のなかに郷愁を帯びた囃子である。各町内から、13の山車が出るという。
  子供たちは金の髪飾りを頭にのせ、鼻筋におしろいを塗って豆絞りの手ぬぐいを首に巻き、揃いの衣装を身にまといひと息入れている。
「ほれ、口紅がくずれたわよ」
  とお母さん。気を使って口紅を直し、身づくろいしてくれている。
  鹿踊(ししおどり)パレードが各方面からお祭り広場に集る。
  鹿踊は黒い長毛を頭に、鹿の角を立て、腰差しのササラと呼ばれるものを一対つけ、それが頭上高く上がっている。腰の太鼓を打ち鳴らし、ササラを立て紺脚絆に白足袋、わらじを履いて進む独特な足さばきである。
  踊りは鹿の躍動する様を取り入れたもので、そのリズムは鮮やかで美しく、その足運びは、つま先を上げ、かかとを運ぶ芸の細やかさが白足袋とわらじに微妙な美しさをかもし出す。舞が始まると黒い長毛が頭の動きによって勇壮に空を斬る。太鼓が打ち鳴らされ、囃子が激しく高鳴る。
  人が鹿になって踊る超自然的な不思議な踊り。鹿は悪疫、災禍を祓う霊獣として崇敬されている。


煌(きらめ)く風流山車

花巻ばやしが聞こえてくる。頭に金細工の飾りをつけてうち揃い、山車を引く子供たち。それが終わると、紺脚絆に白足袋、草履履きで踊る鹿踊。鹿の躍動を取り入れた足のさばきは人々を魅了する。日が落ちて、各町内から山車が繰り出される。花巻ばやしの音色に合わせ、市内を練り歩く豪華な山車は圧巻であった。

 神輿パレードの山車が出る。小学校、中学校、町内の子供会、それに事業所がパレードに参加。その数はなんと120。はっぴに白足袋、ねじり鉢巻の子供たち。声援を送るお母さん。
「わっしょい、わっしょい」
  その元気な掛け声に感動してしまう。少子化といわれるなか、こうして元気な子供が育ってくれたら嬉しい。
  仲間の絆を深め、親子の一体感も生まれるのだろう。祭りはいい。
  夜になって、花巻ばやし踊りパレード。それも町内の振興会や婦人会、舞踊保存会、それに芸子だろうか。きれいどころもまた参加して賑やかだ。
  風流山車が華やかに始まる。
  桃太郎鬼退治、風林火山武田信玄、壇ノ浦の合戦、それから五条の橋牛若丸と弁慶、源義経と白龍昇天など13台。それは1台に100人くらいの行列、30人くらいが山車を引く。金銀に彩られた中に灯がともり、高さ6、7メートルもあろう、大きな山車がまつり囃子のなかに掛け声とともに練り歩く。粋なお姉さんがはっぴ姿にねじり鉢巻。ボンボリの灯りに照らされて一段とあでやかだ。祭りの女はきれいだ。
  行列は延々と長い時間をかけ練り歩いた。花巻は祭りのるつぼとなっていった。

パワー花巻店

4,000坪の売場を持つパワー花巻店は堂々とした店構えであった。
» パワー花巻店

  翌朝、パワー花巻店に出る。4,000坪のホームセンター。今年の春開店した最新店だそうだ。
  東北の要所としてつくった店は、品揃えといい販売企画といい、商品陳列も壮観である。
「広いわねぇ。ここなら何でも揃うわ」
  とお母さん。さすがコメリの店だ。
  その近くに東北地区の要である物流センターが建つ。20,000坪の敷地に白い外装。赤い鶏のマークが輝いて見える。空港の隣地にその威容を見せていた。

文・写真 : 榊 鶏司