かざみどり巻頭文

ホームセンター参入三十周年

 タイムカプセルを埋めたのは10年前である。この10年間、ホームセンター業界は3兆3千億円だった市場規模が3兆6千億円とわずか9・7%しか拡大していない。コメリは、店数271店舗が850店舗に拡大し、売上高も740億円から2,592億円に大きく発展した。
タイムカプセルから出した川崎進一先生の文章を読ませていただいて、思わず胸に込み上げてくるものがあった。

「私は祈る」
東洋大学名誉教授
株式会社コメリ 監査役 川崎進一
  1996年10月現在、バブルの後遺症はいまだ残っているものの、やや沈静化した。
…… ……
前途は不確定である。視界はよく見えない。只ひとつ流通機構に関する限り、消費者大衆を常に基点にする小売業のパワーはかつてないほど大きくなるということである。それだけに小売業は自らの生存と繁栄のために、小売業の社会的使命を追求し、消費者大衆の選択に応えなければならない。
このとき、コメリは第1期10年の区切りを皆の努力で成功裡に終った。再び次の10年を勝ち抜くために、新たなる努力を誓い、母なる大地に再び勝利を祈ってカプセルを埋める。生物の生命には必ず終末があって、土にかえる。しかし、企業は、社会のために人々の生活のために永遠の生命をもたねばならない。
コメリは、この10年の間に、日本の小売業史に誰も果たさなかった新しい業態ハード&グリーンを捧社長の指揮の下に開発し、成長させ、ゼロから700億円に近い優良企業を育てあげた。このすばらしい成果は、コメリ・ピープルの創造力と組織力によるものである。
次の10年、全く異なる経営環境になるであろう。10年後2,000億円を目指して新しい組織力、卓越した創造力、再び新鮮な店舗企画力で、歴史的成果をあげることを期待する。
私は生物である。土にかえる日が来るであろう。しかし、わが郷土に根を持ったコメリの永遠の繁栄を祈りつづけないではおられない。

 川崎進一先生は、母なる大地に再び勝利を祈ってカプセルを埋めると記された。企業は、社会のため、人々の生活のため、永遠の生命を持たなければならない。「私は祈る」と言っておられるのである。コメリの永遠の繁栄を祈りつづけないではおられないと書かれてあった。
こんなにも熱い思いでコメリを育ててくださった恩師があってコメリの今がある。企業は多くの人に見守られて発展していることを忘れてはならない。
名もない企業だったコメリを、ここまで育ててくださった川崎進一先生、使命を忘れるなと諭された退任の言葉を思い出しながら目頭が熱くなった。

(うた) わが恩師「私は祈る」と書かれたり社会のために使命を果たせと