かざみどり巻頭文

ホームセンター参入三十周年

 今年の4月でホームセンター参入30周年である。振り返ると、つい昨日のようにも思え、また随分長かったようでもある。
 おかげさまで店数は843店舗。売上は2,592億円。そして、上場してからこの20年間、連続増収増益を続けさせていただいている。ありがたいことである。
 ホームセンターに参入した昭和52年頃は、日本列島改造論が持ち上がり、建設ブームが起き、自動車輸出では海外との競争が始まっていた。
 ホームセンターも各地で開店が急がれ、新潟県内ではコメリが最初であった。社員の採用も大卒が集まり、パートさんも応募が多かった。人生の大勝負が迫っていることを感じ、気持ちが昂ぶっていたのである。
 新規事業はセルフ販売方式の小売業で、いまだ扱ったことのない商品を並べ、悪戦苦闘の日々であった。田んぼの真ん中の店へお客様が来てくれるのだろうかと心配したものである。
 開店当日は、待っていたようにお客様がどっと押し寄せ、売り出しのチラシを手に買っていかれる。たちまち売場は空になった。バックルームの天井まで積み込んだティッシュペーパーがみるみる減って、車のバッテリーも10トントラックで入荷した数百個が、あっという間になくなってしまった。レジへは長い列が続き、あれだけ練習してきたのに違算は出るは、釣り銭はなくなるは、大騒ぎであった。
 お客様がお金を持ってレジに並んでいる姿を見ると、今までの商いは自転車で配達をし、請求書を書いて何回も集金をしていたことを思い、申し訳ない気持ちでいっぱいであった。
 商品が足りなくなり、大騒ぎで手当てをする。朝から続いたお客様の入りで飯も食べず、仕事に追われていた。閉店間際にもお客様の流れは止まらなかった。大盛況のオープンを喜び合う間もなく、翌日の作業に追われていたのである。
 振り返ってみると、ホームセンターも大きく変化してきた。新規出店を指導し、輝かしい歴史のなかにあった老舗ホームセンターが姿を消し、店もいろいろな形態に変わってきた。巨大店舗を志向する企業、食品や衣料を入れたホームセンターもできている。わが社では小商圏に300坪のハード&グリーン業態を開発した。そして、ミスタージョン、キッコリー、ヤマキの3社を傘下におさめて大きく飛躍をした。
 ホームセンターの大型連合も出現している。これから激動の時代を迎える。競争社会は、独自性を持たなければ勝ち残っていけないだろう。
 日本にはまだ本格的なホームセンターがない。コメリはその理想を目指して精進していきたい。
 今年は、念願だった九州への出店が始まり、1月から21店舗をオープンすることができた。ナショナルチェーンとしての責任を果たしていかなければならない。